江戸時代、オランダ商館員として来日した人物が収集した文物を本国に送る、もしくは持ち帰った後、本国などで展示、公開された事例があります。例えば、ケンペル、ブロムホフ、フィッセル、シーボルトなどです。
万博以前のヨーロッパにおける日本関連文物の展示② ケンペル 大英博物館 - 在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究
フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト(Philipp Franz von Siebold、1796-1866)は、ドイツのヴュルツブルグに生まれた医師、博物学者で1823年8月に来日、長崎出島のオランダ商館医として活動したほか、1824年には出島外に鳴滝塾を開設し西洋医学を教えました。また、オランダ商館長の江戸参府に同行した際など日本各地をまわるなかで多くの文物を収集し本国に送付、もしくは持ち帰ったほか、出島内に植物園を開設して多くの植物を栽培したほか、植物標本、植物を本国に送りました。
長男のアレクサンダーは父の再来日に同行し、1859年以来日本に滞在、イギリス公使館の通訳となり、後に1867年パリ万博の際には徳川昭武遣欧使節団に同行した。その経験をいかし明治政府にとって初めての万博公式参加となった1873年ウィーン万博では、日本の参加出品のアドバイスをおこないました。(著作に『シーボルト最後の日本旅行』(斎藤信訳、平凡社東洋文庫、1981年)。)
次男ハインリヒは兄アレキサンダーの再来日に同行して1879年来日、オーストリア=ハンガリー帝国大使館の通訳兼外交官として勤めながら考古学調査、民族学的収集をおこないました。(著作に『小シーボルト蝦夷見聞記』(原田信男訳、平凡社東洋文庫、1996年))
ハインリッヒについては、国立歴史民俗博物館とウィーンの世界博物館の共同プロジェクトによる調査がおこなわれ2020年にウィーン世界博物館にて特別展「「Japan zur Meiji-Zeit. Die Sammlung Heinrich von Siebold(明治の日本―ハインリッヒ・フォン・シーボルトの収集品から)」が開催され、その成果は日高薫/ベッティーナ・ツォルン責任編集、人間文化研究機構国立歴史民俗博物館編『『異文化を伝えた人々Ⅱ ハインリッヒ・フォン・シーボルトの蒐集資料』(臨川書店、2021年)として刊行されました。
www.weltmuseumwien.at
長女の楠本イネは、医学、蘭学、オランダ語を学び、産科医となりました。
父フランツ、そして二人の息子アレキサンダー、ハインリヒもふくめたシーボルト父子の日本関連コレクションはオランダ、ドイツ、オーストリア、日本などで保管、展示されています。
オーストリアの日本関連文物 世界博物館② フランツ・フェルディナント皇太子日本滞在関連 - 在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究
ウィーン万国博覧会と日本③ 日本からの出品物の現在ー応用美術博物館(MAK) - 在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究
イギリス内に所蔵されている日本関連文物・書籍コレクションと日本研究(ケンブリッジ大学) - 在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究
和紙コレクション パークス、オールコック、シーボルト - 在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究
シーボルト父子に関する研究は蓄積があり、幕末から明治初期にかけての日本の文物、およびそのヨーロッパでの蒐集、展示、外交など多方面から研究がなされています。
シーボルト(父)はドイツ人ですが、オランダ商館員として来日、国交のないドイツ人としての来日は不可能であったためオランダ人として日本に来日しました。そのため、彼のコレクションはオランダ、とりわけライデン市で多く保管されており、ライデンにある国立植物学博物館,国立自然史博物館,世界博物館(旧国立民俗博物館)などに分蔵されています。
ライデン世界博物館は立命館大学との共同研究により日本関連の文物とりわけ浮世絵、古典籍のデジタル化がすすめられ、データベースが公開されています。
https://www.arc.ritsumei.ac.jp/lib/vm/RV/
植物標本ほか、アジサイなども送られ現在はその子孫が育てられています。
シーボルトの植物標本などのコレクションはライデンの国立植物学標本館のほか、ロシアのサンクト・ベテルブルクのコマロフ植物研究所、ドイツのミュンヘンのバイエルン州立植物標本館のほか日本国内では東京大学総合研究博物館、東京都立大学理学部附属牧野標本館などで保管、展示されています。
2000年には日蘭交流400年を記念してオランダ国立植物学標本館から東京大学総合研究博物館に標本が450点余り贈られ、2003年10月4日―12月7日に東京大学総合研究博物館にて「シーボルトの21世紀」と題した展覧会が開かれました。
シーボルトの21世紀
このように現在もシーボルト・コレクションは国内外で保管、展示されていますが、シーボルト(父)がヨーロッパに持ち帰った時点で、彼自身による展覧会も開かれました。シーボルト自身による展覧会については、近年研究がすすみ書籍の刊行のほか、展覧会も開かれましたが別項目で説明します。