在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究 

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ヴィクトリア&アルバート博物館① 陶磁器コレクションと1876年フィラデルフィア万博

1851年に開かれた第1回ロンドン万国博覧会の収益金をもとに、産業、工芸品を主に展示する(出品物を中心に)博物館、サウス・ケンジントン博物館が建てられました。現在のヴィクトリア&アルバート博物館です。

 

産業革命により工業製品の大量生産には成功したイギリスですが、粗悪品がめだち、デザインなどの向上のために、技術的にも、またデザインとしても手本となるような品を恒常的に展示して人々が学べるようにするという目的でした。

 

19世紀後半には、イギリスでも日本に関する品々についてのジャポニスムの流行があり、陶磁器、工芸品なども注目されていました。そこで、サウス・ケンジントン博物館館長(現在のヴィクトリア・アンド・アルバート美術館)の館長、フリッツ・オーウェンは、特に陶磁器についてその歴史的変遷がわかるように、総合的に購入したいという希望を持ちます。そして佐野常民に働きかけました。フィラデルフィア万博には、起立工商会社から出品されました。

フィラデルフィア万博で展示、終了後、それらは一括してサウス・ケンジントン博物館が購入するという約束をします。

博物館に購入された陶磁器は、縄文土器、須恵器から、中世陶磁としての茶壺、茶入、さらに近世に入っての楽茶碗、伊万里焼、現代陶磁としての明治陶磁器まで216点で、

サウス・ケンジントン博物館が60ポンドで購入、イギリスにおける日本陶磁器の基本資料となり、現在も展示室に飾られています。

当時のコレクションについては、博物館のコレクション検索で探す事ができます。

 

16楽茶碗 No242-1877   19香炉(貝殻9 No.260-1877

 

野口祐子「ヴィクトリア&アルバート博物館所蔵の 1876年フィラデルフィア万国博覧会に展示された 日本陶磁器コレクションに関する調査について」(『京都府立大学学術報告(人文)』第69号、2017年2月)

坂本久子「フィラデルフィア万国博覧会と眞葛焼」(『日本デザイン学会研究発表大会概要集』58、2011年。)

 

館長が日本の陶磁器の歴史的変遷がわかるような品々を依頼し、体系的に購入したように、この頃、日本について体系的に研究する「日本学」の研究が様々な分野ではじまります。文学、美術、言語など各分野で研究がはじまり、書籍や論文が刊行され、やがでは大学での日本語、日本学の講座が創設されるようになります。

日本では1872年に日本アジア協会、1873年にOAG(ドイツ東洋文化研究協会)が創立されたように、イギリス日本協会(1891年)、学術団体も各地で創設されていきました。

日本研究の歴史 日本アジア協会設立経緯① - 在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究

 

日本についての工芸品、絵画など美術を通じて日本を学ぶ研究書も刊行されはじめます。

1880年 大英博物館のオーギュスト・フランクスによって蜷川式胤(のりたね)『観古図説』のフランス語版などを参考に、解説書『Japanese Pottery』が出版されます。

これは 陶磁器についてのフランス語による解説書、その英語訳です。

 

(参考 今井祐子『陶芸のジャポニスム』(名古屋大学出版会、2016年)所収、「第3章 『観古図説 陶器之部』の海外輸出」(101-149)

 

陶磁器、日本美術を、一つの作品だけでなく、体系として研究対象とする、認識するということが19世紀末にはおこなわれていました。

 

このような研究者と、現在に残るコレクションについては、別途記述していきたいと思います。