在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究 

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チェコの日本関連文物

2月6日から3月20日まで、広尾・チェコセンターにて「チェコの旅行家たちの目に映った近代日本」という企画展が開催されました。

広尾・チェコセンターで企画展「チェコの旅行家たちの目に映った近代日本」 - シブヤ経済新聞

 この展覧会は、19世紀末から20世紀初頭にかけて日本を訪れたチェコの旅行家たちが「見た」日本を写真で紹介するもので、ナープルステク博物館が所蔵する写真を中心にした展示のようです。

 ナープルステク博物館は、1993年に国際日本文化研究センターが日本関連の所蔵品調査をおこなっており、調査結果は『ナープルステク博物館所蔵日本美術品図録』(国際日本文化研究センター、1994年)として刊行されています。

 

 美術では、ミュシャやオルリクが思い起こされると思います。

ヘレナ・チャプコヴァー執筆の「チェコジャポニスム」(『中欧・東欧文化事典』 2021年)によると、ボヘミアにおけるジャポニスムの始まりは 1886 年 に,チェコで初めての民族誌博物館がプラハに設立(現在のナープルステック美術館)されたことによります

 そもそもチェコでは、1880年代から海外で出版された日本への旅行記が翻訳、刊行され、1890年代からは実際に訪日したチェコ人の旅行記が、さらには日本を舞台とした小説が刊行されるようになります。チェコで刊行された日本を題材とした小説は、1884年にユリウス・ゼイエルが『権八と小紫』が最初です。この作品は、イギリスの元外交官アルジャーノン・フリーマン=ミッドフォードによる『昔の日本の物語』(1871年)と歌舞伎の平井権八と小紫の話をから創作したようです。

 

ゼイエルはヴォイチェフ・ ナープルステック(Vojtěch Náprstek)夫妻の希望による日本の美術品収集の命をうけました。ゼイエルによる日本美術コレクションは、ナープルステック美術館所蔵の日本関連美術品となっています。

 ゼイエルは、ジャポニスムの流行するパリを訪れていますが、アール・ヌーヴォージャポニスムチェコというと、美術では、ミュシャやオルリクが思い起こされると思います。 文学、芸術だけでなく、建築でも、たとえば、現在広島の原爆ドームとして知られる広島産業奨励館の設計はチェコのJ.レッツェルによります。

 

【参考文献】

千葉市美術館他編『ミュシャと日本,日本とオルリク』(国書刊行会、2019年))

阿部賢一訳、ヘレナ・チャクコヴァー『ベドジフ・フォイエルシュタインと日本』(成文社、2021年)