在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究 

在外日本関連コレクションの調査・研究報告 https://researchmap.jp/mamiko

ウィーン万国博覧会と日本② 日本の展示品の現在 世界博物館、トルコ、有田、東京国立博物館

1873(明治6)年5月1日から11月2日にかけて、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の治世25周年記念してウィーンで万国博覧会が開催され、23か国が参加、出品部門は26、会期中の総入場者数は約722万5千人にのぼりました。

 

会場のプラーター公園中央には、直径108メートル、高さ84メートルにおよぶ鋳鉄製ドームの産業館が建てられ、日本の出品物は産業館などそれぞれの部門に展示されたほか、会場内の東端附近の一画に位置する日本敷地内に日本家屋の茶店と日本庭園が造られました。

産業館の日本区域入り口には、名古屋城金鯱と180センチほどの有田焼の花瓶が置かれた。巨大有田焼花瓶は2つ出品され、日本(有田ポーセリンパーク)とトルコ(ドルマバフチェ宮殿)に現在も残っています。

ウィーン万国博覧会と有田焼 - 在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究

 

ジラルデッリ青木美由紀「万国博覧会オスマン帝国―「美術」とオスマン宮廷の日本趣味受容―」(佐野真由子編『万国博覧会と人間の歴史』(思文閣出版、2015年)

藤原友子「明治有田における大作製作とその意義」(『有田焼創業四百年記念 明治有田超絶の美 万国博覧会の時代 論考集』(西日本新聞社、2015年)

 

ウィーン万博への出品物は、ウィーン市内の博物館に展示品が収蔵、展示されています。ウィーンの世界博物館、そしてMAK(Museum für angewandte Kunst) オーストリア応用美術博物館です。

世界博物館

1873年ウィーン万国博覧会と日本展示① 世界博物館 - 在外日本関連コレクション 博覧会/博物館 調査研究

MAKについては別記事で設立経緯も含めて紹介したいと思います。

 

日本にも上記の有田焼のほか、東京国立博物館にも展示品が収蔵されています。

ウィーン万博閉会後、出品展示品(出品した美術品、工芸品)、展示品を販売して得た資金で購入した機械・製品・工芸品などを積んだフランス船ニール号が帰国途中、明治7(1874)年3月20日夜半に暴風雨のため伊豆沖で暗礁に乗り上げ座礁、その後沈没してしまいました。角山幸洋『ウィーン万国博の研究』(2000年、関西大学出版部)所収「第5章 仏国船ニール号の沈没」に詳細が書かれています。

 

展示した名古屋城金のしゃちほこは、大型荷物のため香港に積み残されており沈没消失を免れました。沈没船の中から一部が引き上げられ、そのうちの一部は博覧会事務局、のちに東京国立博物館へ収蔵されました。

例えば 陶器 銹絵葡萄図角皿 乾山作

C0075312 銹絵葡萄図角皿 - 東京国立博物館 画像検索

 

漆製品は、工芸品としての美しさとともに海水に対する耐久力を示すため(引き上げられるまでに一年以上海中)、1876年フィラデルフィア万博で再展示されました。

漆器 書棚 吉野山蒔絵見台

吉野山蒔絵見台 文化遺産オンライン

 

この漆器フィラデルフィア万国博覧会の報告書「米國費府博覧會報告書-第二-」の日本出品目録の中に記述があります。 『米國博覧會事務局 米國博覧會報告書-第二 日本出品目録』 34頁。 原本・国立国会図書館所蔵 1876(復刻フジミ書房、1998年))

 

號外            出品主  内務省 博物局

     髹漆見臺 凡百五十年前ノ製澳国博覧會ニ出陳シ載歸ノ中途

          豆州妻良沖ニテ郵船沈淪ス後一年半ヲ過キテ之ヲ

       取揚タリ黒漆金髹爛然奮ノ如ク些ノ損傷ナシ我邦漆器

       ノ堅牢能ク久キニ堪フルヲ證スルカ為メ今之ヲ出陳ス

 

これを読むと、漆器の堅牢性を証明するために「髹漆見臺」をフィラデルフィア万国博覧会に展示したことがわかります。

 

そのほか 引き上げられた物品 色絵金彩婦人皿(ナポレオン3世皇后図皿)があります。

色絵金彩婦人図皿 文化遺産オンライン

このような西洋陶磁器については、ウィーン万博の期間中、伝習を目的として日本から数名の技術者が派遣されました。陶磁器の学習をした人が現地(フランス、セーブル焼の研修のため製陶所に赴いた)で購入した可能性もあります。